暁を越えて (autumn 2022)

暁を越えて 4 rui side

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『もったいない』『夕食ぐらい作る』というのを無視して、夕食は外で食べた。近くに店はいくらでもあるし、作ってる時間があるならもっと他のことに使いたい。

部屋に戻れば、いつも通りシャワーへと向かう。俺からがいつもの流れで、というのも牧野が先にベッドに行って寝てたりしたら、と思うから。そういうコトばっかり考えているなんて、幾つだよ俺、と思うけれど、そうなんだから仕方がない。

ベッドサイドのウィスキーを口にしながら、彼女を待つ。数年ぶりに会った牧野は、落ち着いていて、それはそういうコトの時もで、余裕って感じだ。だけどそうなってしまえば素直に求めてくれるから、もっともっととなってしまう。多分どんな牧野でも欲しいのは変わらないけれど、これまでの彼女の経験を想像してしまって、焦燥感のような不安を感じて、一層求めてしまう。

ほとんどの女は俺の家とか、社会的地位とかそれだけで寄ってくるから、自分からどうにかしたいと考えたことなんてなかった。大学の時、牧野と付き合っていた時も、こんなことは感じてなくて、ただ好きだから触れる、それだけだった。

だけど今は満足しているのか?他の男とか何もないのか?週末しか来ないのは仕事なのか?などと考えてしまう。
バーで見た牧野は、大人の女の感じで、男なら触れたいと思うだろう。いや、牧野はいつも柔らかな女性らしいスーツをまとっていて、いつもいつも触れたいと思わせる。スカートから伸びたほっそりした脚、くるぶしの骨張ったところも触れたい。よく着ているドレープやゆったりとしたリボンのブラウスは、下品にならないギリギリの深さで開いていて、首元まで全て隠せと思いながらも、つい見てしまう。学生の頃とのギャップが大きくて、なおさら苦しい。俺の知らない数年間は何をしていたのか、問い詰めたくなる。

そんな思いを追いやりたくて、またグラスを一口傾けると、牧野が部屋に入ってきて、毎週末のことなのに、その姿に見入る。
乾ききらずに少し濡れた髪が張り付いた首筋、少し上気した頬、ワンピースのパジャマから覗く足首に、つい喉を鳴らしてしまう。その姿もいいけど、早く中に触れて鳴かせたい。

それでも、強引に性急にはしたくなくて、ベッドに座った俺の隣に立つ、その手をそっと掴む。
「仕事、疲れた?」
「ううん、いつもと同じ。でも、もう少ししたら忙しくなりそう。週末、来られなかったらごめんね」

『いや、駄目だと思う。色々我慢できない』なんて言えなくて、ただ手を引いてベッドに座らせる。
「週イチは会いたい」
柔らかな言葉を選んで伝えても、困った様子で首を傾げるから、それ以上は言えなくて、それにもう我慢出来なくて、キスをした。


 
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