Put the devil into hell/終 (Sou’sBD 2022)

Put the devil in to hell 6

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それからしばらくは大人しくしていた。何となく、近づいちゃマズい気がして。秘密にするには、これ以上は危険だって分かってて、なのに、なんだか落ち着かねえ。
それでも、時々大学で見かける牧野は、目が合えばあの共犯者の笑いをしているようで、目が離せない。

「牧野」
用事も無いのに声をかける、自分がよく分からない。咄嗟に適当な話題を探す。
「俺んとこの事務所で、手伝い探してんだよ。まぁまぁの時給だし、お前やらねぇか」
思いついただけの話だけど、嘘じゃねぇ。何かしらはあるだろ。
「あのさぁ、この間から何なの?そういうの、止めてって。もういいでしょ」
「そういうのじゃねぇって。マジ、マジ。おまえ、ジジイ転がしだろうが。丁度いいんだよ、ウチも年寄り多いからな」
そう言ったところで、これ以上ないほど嫌そうに見られる。

「団子屋の時給、いくらなんだよ」
聞いた時給を適当に割り増した額を、俺はウチの時給として口にした。
また類の顔色うかがってんのかよ、って思ったら、もう絶対にうんと言わせたくなってた。
「お前、また類の顔色うかがってんのかよ。類がいいって言わないと何にも出来ない女なのかよ」
そこで、こちらに向けられた眼差しが嫌そうな色合いから、怒りを含んだものになる。
「そんなんじゃない!西門さんが色々うるさく言ってくるからでしょ」
「じゃあ教えてくれよ、下心なく働けて、ジジババに好かれて、俺に近づきたい女の視線も、俺の魅力にもなびいたりしねえ、アイアンハートを持った、それなりの時給で満足してくれる女って、他にいんのかよ」
「知らないわよ、そんなの」
「だからお前に言ってんだろ。結局は類の許可が要るってことかよ」
怒りの元は類なんだろう。俺はそこを突いた。

「違うから!全っ然違うから!………分かった。やる。稼がせてもらうから。茶道とか全然分からないけど、そんなんじゃ困るとか、後で言わないでよね。バイトは貴重な収入なんだから、そのオイシイ時給、もらい続けるから!」
俺は心の中で笑っちまう。この辺は、相変わらず分かりやすい。すぐ熱くなっちまうんだよな、ホントおかしな女だ。
「じゃあ、すぐにでも来いよ。今日か?明日か?どうする、牧野」
「え、そんなすぐに?えっと…」
「まずは説明だけだから、お前の予定に合わせてやるよ」
そうして、たたみかけるようにして、明日の時間を決めた。


 
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