Put the devil into hell(soujiro’sBD2022)

Put the devil in to hell 7

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無理やり捻り出したような牧野の仕事だったけれど、結果的に事務所のヤツも牧野が来るようになって、明るくなった。
「総二郎さん、今日は牧野さんはまだ?」
そんなことばかり言われる。
両親は素直に口に出すことはないが、アイツが来る日は、心なしか機嫌がいい。


一緒に過ごすようになれば、それも分かる。
「あ、そんな風にすればいいんですね。ちょっとやってみます………あ、出来ます、出来ました!教え方、上手ですねえ。ありがとうございます」
そこで無邪気な笑顔。
「あ、西門さん!」
明るい笑顔のまま、事務所に顔を出した俺に近づいてくる。
「楽しそうだな」
「うん、皆さん優しくて、振る舞い方とか、すごく勉強になるし。お金、もらっていいのかな」
「何だよ、オイシイ時給もらい続けるんだろ」
「そう、そうだった」
そうしてまた笑うコイツは、意外と可愛いなと思っちまう。

働きぶりも真面目だから、茶道のことも少しずつ覚えてきている。
何より人好きのする牧野は、長老クラスのじいさんにも気に入られてて、何かと重宝されてる。マキちゃんなんて呼ばれてて、まあ、つくしちゃんよりはいいが……
でも、それも分かる。牧野は苦労人だからか、困ってる奴を見過ごせない。それもさりげなくて、相手の負担にならないように、暇だからとか、さっきみたいに、それ教えてくださいとか、理由をつけては手を差し伸べる。何かをお願いすれば、自分のことのように誠実に取り組んでくれて、何より、それを楽しんでる。少なくともそう見える。
だから、年長者ほどそういう細やかさが分かるんだろう、誰もが牧野が好きになる。
不覚だが、俺も以前よりはずっと彼女のことを身近に感じて、いい奴だなと思う。

「家元夫人が、部屋に寄って欲しいってよ」
「うん………あ、はい、総二郎さん」
事務所を出て、家元夫人の部屋へと向かえば、慌てて事務所用の呼び方にする。
「いいよ、二人の時は。……お前、家元夫人、怖くねぇの?」
「え、何で?」
「スゲえ冷たくて怖いって、皆言うぜ」
「最初はね、私もそう思ったけど、ただ真面目なだけじゃない?ちゃんとしてれば、色々教えてくれるよ」
そのちゃんとが難しいし、その前に皆近づかねえんだ。さすが鋼のハートだぜ。こんなだから、簡単に人の懐の中まで入っちまう。ホントおかしなヤツ。

家元夫人のところで、じゃあなと別れようとした時、夫人のごく僅かな微笑みが目に入って、驚きの余り凝視しちまう。長い付き合いじゃなきゃ分からねえほど僅かだが、スゲえもん見た。
そこで家元夫人がこれ以上ないほど嫌そうな目で見るから、急いで視線を外して、その場を離れた。


 
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