暁を越えて (autumn 2022)

暁を越えて 13 rui side

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父と会ってほしいと牧野に話したのは、それからしばらくしてからだった。

「父に会って欲しいんだ」
いつもの週末、いつものように牧野が作った夕飯時、そう言うと牧野は固まってた。
「ちゃんと紹介したいんだ。それに二人のこと、反対なんてされないから」
「でも…」
「俺はずっと牧野と一緒にいるって言っただろ。だから、こういうこともキチンとしておきたい」
そう、俺は牧野といるだけでよくて、こういうことをおろそかにしてしまう。だけど、それが良くないんだ。

何の言葉も返ってこないから、この間からの思いをつい聞いてしまう。
「俺との将来とか、考えないの?」
「だって………考えたこと、なかったから」
困ったようにそう言われれば、やはり少しショックだ。
「じゃあ、考えて欲しい。俺は牧野じゃないと駄目だから。それに……」
そこで少し口ごもる。俺の今の立場も伝えておく必要があるけれど、それは少し言いにくい。

「俺さ、今課長なんだ」
それが何って顔を向けられる。普通ならそうだろう。だけど、俺は花沢家の直系長男で、同じ立場の司もあきらも既に、経営の中心に触れる立場にいる。管理職の一番下にいる俺とは大違い。
「司もあきらも俺と同時期に入社してるのに、立場はもっとずっと上。俺が下過ぎるんだ。俺……牧野と会わない間、ずっと酷い生活しててさ、そんなだから、俺が継ぐ必要はないって言われてて……だから特別扱いも無いってこと。嫌になった?」
「私は、別に類の会社での立場なんて気にしたことないよ。でも」
「でも?」
「口ではそう言ってても、実の息子なんだし、心のどこかでは、類にって考えてるんじゃない?そうすると私なんかじゃ……」
結局はそこに行き着く。だからこそ、俺が話すだけじゃ駄目なんだよな。

「だから、会って欲しいんだよ、父に。再来週、ちょっと先だけど、日本に帰国するから、その時にって言ってある。だから、会うだけ会ってみて、な。考えておいて」
さっきよりずっと強い口調で言って、その先の反論はさせなかった。



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