寝たふりしてる間に (New Year’s Day 2023)

寝たふりしてる間に 7

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いつも平日は帰宅の遅い類が、珍しく早く帰ってきたのは、夏の暑さを感じる、梅雨が終わる頃だった。

「ただいま」
「あれ、今日早いね」
「外、すげえ暑い。こんな日に視察でさ。暑くて、汗かいたし、明日出来ることは残して帰ってきた」
「ごめん、夕食、食べるって言ってなかったから、自分の分だけ食べちゃったとこ。何か作る?」
「いや、軽くさっき付き合いで食べたから」

ネクタイを緩め、シャツの釦を外しながら冷蔵庫からビールを出して、ソファの私の隣に座る。
まだ20時過ぎで、こんな時間に帰ってくるのは珍しい。
隣からは、フワリと類の香りがして、チラリと見ると、二つ目の釦まで外れてるから、胸まで見えそうで、ドキリとしてしまう。
更に、つい見てしまう指先はしなやかな美しさなのに、捲られた袖から見える腕は少し筋張ってて、男の人を感じさせる。
汗で湿ったこめかみ辺りの髪も、なんていうか…セクシー。

いや、こんな目で見ちゃ駄目なんだって、と気づかれないように、ゆっくりと視線を逸らす。
「汗かいたなら、お酒の前にシャワーすれば?スッキリするでしょ。お湯張る?」
「シャワーだけでいいや。このビール飲んだら浴びる」

よほど暑かったのか、喉を鳴らしながらビールを飲む。その喉の動きにも、男の人を感じてしまう。
これまでは、遅い時間ならバスルーム、早い時間なら自分の部屋で着替えてたから、こんな風にスーツを着崩した類のこと、しっかり見たことがなかったな、と思う。

ジッと見ている私に?って目を向けてから、空の缶をキッチンのゴミ箱に入れて、
「シャワーしてくる」
と彼はバスルームへと消えた。



類は大体帰ってきた後、少しお酒を飲む。それは時間が早くても遅くても変わらない。
だから、そのための下ごしらえはしていて、少し手をかければ出せるようにしてある。
シャワー後のお酒のために、私はキッチンに立つ。手を動かしながら、何とはなしに考えてしまう、類のこと。


最初は初恋の相手だったけど、司と付き合う頃には、友達で、男性を意識することは無くなってた。それに司よりもずっと中性的な感じがしてて、その距離が近くても、触れたりされても、赤くなっちゃうのは初恋の名残って感じだった。
だけど、こうして一緒に暮らせば、やっぱり男の人で……それも、とびきり格好いいってこと、私は忘れてた気がする。司や類、F4に私は慣れきっていた。
仕事をして、学生と違って好むと好まざるとに関わらず、色々な人、色々な男の人と接して、それから類を見てしまえば、やっぱり凄ーく格好いいんだ。
だけど、そんなこと考えるなんて、同居には相応しくない。

でも……そう、類が格好よすぎるんだ。時々無駄に色気を洩らしてる。さっきだってそう。
そもそも男の人なのに、私より肌もつやつやで、髪もさらさら、指先までスッとしてて、釦を開けば、色気が洩れまくってる。
「もうだだ漏れなんだから、ちゃんと隠しとけっつーの。それでなくても隠れてないんだから、もう……」

「何が洩れてるって?」
不意に耳元で出される声に、ビクリとしてしまう。
「何!急に話しかけないでよ」
「いや、何回か声かけたけど…」
振り向いて見た類は、グラスとワインを手にしているから、少し前からそこに居たんだろう。私はまた一人で話していたらしい。

「ご、ごめん。他のこと考えてた。あ、これ、おつまみにして。食べないで飲むのは体に良くないよ」
「うん」
笑って見返すところは、なんか可愛くて、さっきの彼とは違って安心する。


 
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